老舗ドメイン

先日、面白いコラムを読みました。

日経MJの小阪祐司氏によるコラム「招客招福の法則」だったのですが、内容としては、120周年を迎える老舗呉服店の120周年記念イベントの話です。通常は、均一セールなどをして客を呼び込むことが行われているようですが、この老舗呉服店は「自社らしいイベントを」ということで、高級ホテルでの有料パーティーを開催したのだそうです。期待に反して顧客は大喜びだったこと、顧客はお金を使いたいのだと書かれていました。

このコラムを読んで感じたのは、この老舗呉服店は、呉服を売っている訳ではないんだな、ということです。呉服店店主は知ってかしらずか分かりませんが、事業ドメインを呉服販売業と位置づけてはいなさそうです。

事業ドメインの例としては、NECの「C&C」とか、セブンイレブンの「便利の創造」などが有名です。逆に失敗事例としてよく挙げられるのは、富士ゼロックスの「The Document Company」でしょう。

事業ドメインをどのように定義するかで戦略の最適が図れると同時に、定義を誤るとゼロックスのように事業を狭めてしまう結果になりうるということです(ゼロックスは、Documantと定義することでコピー機から脱却することが遅れたと言われています。逆に、Image Communicationを標榜したリコーはコピー機以外にも技術開拓を行ってコピー機に縛られることがなかったといわれています。)。

話を戻すと、この呉服屋さんの旦那さんは、お客さんが何を欲しがっているのか、それが自分達のやりたいことなのか、この二つをよく分かっている感じがしました。同じ業界の中にいると、他の企業のことが気になって顧客に対する深い理解ができなくなるものです。呉服屋で言えば、均一セールを他の企業がしているから、安易に同じ方法をとってしまうといったところでしょうか。

高級ホテルでのパーティーであれば、呉服屋の顧客層が欲しがりそうな「何か」があったのでしょう。それは、客同士のつながりかも知れないし、和服を着て出かける機会の提供かも知れないし、老舗とのつながりを生み出してくれる特別感かも知れません。いずれにせよ、呉服店は顧客の欲しがるものを提供したし、また、それが同時に「自社らしいこと」だったと書かれていました。

どのような説明の仕方にせよ、上得意の顧客を対象にして差別化していくということを実感させられました。教訓にしたいエピソードでした。

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