(要約)新しい成長テーマに投資するには、既存テーマの見直しが欠かせません。重要なのは、今のテーマを単に切ることではなく、「継続」「生まれ変わり」「棚入れ」で整理することです。本稿では、ゾンビテーマを可視化し、将来の競争優位性見込みを加えて判断する実務フレームを整理します。
中長期の成長テーマを増やしたいと考える企業は多くあります。しかし現実には、新しいテーマを追加するだけでは、なかなか前に進みません。理由は単純で、今のテーマに人と時間が貼り付いている限り、新しいテーマに資源を移せないからです。
このとき多くの企業で起きるのは、儲かる見込みが薄いと感じながらも、誰も止められずに続いているテーマの存在です。資料では、こうした状態を「ゾンビテーマ」と呼びうる文脈で捉え、既存テーマの整理と新テーマ開始はセットで考えるべきだとしています。
本稿では、ゾンビテーマをどう見直すのか、なぜ「継続・生まれ変わり・棚入れ」の3択で考えるべきなのか、そしてモメンタムマトリクスを使ってどのように再評価すべきかを整理します。

なぜ既存テーマの棚卸しをしないと新テーマに投資できないのか
新テーマを増やせない理由を「アイデア不足」だと考える企業は少なくありません。しかし実務の現場では、アイデアより前に、既存テーマの整理ができていないことが大きなボトルネックになります。今のテーマに人員、予算、会議体、評価目標が紐づいている以上、それを見直さなければ、新しいテーマに十分な資源を振り向けることはできません。
資料でも、「既存テーマの整理と新しいテーマの開始はセット」であり、どちらか片方だけでは前に進まないと整理されています。
つまり、テーマ創出の議論は、単に「何を新しく始めるか」ではなく、**「何を続け、何を変え、何を棚に上げるか」**まで含めて設計しなければなりません。
この発想がないまま新テーマだけを増やそうとすると、現場は既存案件と新規案件の二重負担を抱えます。その結果、新テーマは「やると言ったが進まない」状態になり、結局は短期案件が勝ってしまいます。
ゾンビテーマを「継続・生まれ変わり・棚入れ」で考える
既存テーマを見直すときに重要なのは、「続けるか、止めるか」の2択で考えないことです。2択にすると、現場は防御的になりやすく、止める判断もできず、続ける理由だけが積み上がりやすくなります。そこで有効なのが、**「継続」「生まれ変わり」「棚入れ」**の3択で考える方法です。資料でも、現場にこの3択を選ばせる設計が示されています。
継続とは、そのまま進めることです。現時点でも競争優位があり、投資継続の合理性があるテーマが該当します。
生まれ変わりとは、今のままでは厳しいが、将来の競争優位を作り直す余地があるテーマです。用途転換、提案内容の変更、技術の組み合わせの見直しなどがここに入ります。
棚入れとは、いったん積極投資を止めることです。すぐに完全終了とは限りませんが、少なくとも優先投資対象からは外します。
この3択にすることで、現場は「止めるかどうか」ではなく、「どう扱うべきか」を考えやすくなります。特に日本企業では、低収益テーマでも即時廃止しにくい事情があるため、「生まれ変わり」という中間選択肢を持つことに実務的な意味があります。
モメンタムマトリクスの横軸と縦軸は何を意味するのか
資料では、この3択判断を支える道具としてモメンタムマトリクスが提示されています。横軸は現在の競争優位性、縦軸は将来の競争優位性見込みです。
言い換えれば、横軸は「今どれだけ戦えているか」、縦軸は「生まれ変われば将来戦えるようになる見込みがあるか」を表します。
この整理の利点は、過去実績だけで判断しないことです。現在の収益性や競争力だけを見れば、低いテーマは一律に切るという結論になりがちです。しかし現実には、今は弱くても、顧客課題調査や用途探索、競合調査を通じて、別の姿に転換できるテーマがあります。そうした余地を可視化するのが縦軸です。
したがって、モメンタムマトリクスは「今の成績表」ではありません。むしろ、現在地と変身可能性を同時に見るための判断フレームです。これにより、「低収益だから即終了」という短絡的な判断を避けつつ、将来の競争優位づくりに資源を向ける議論がしやすくなります。

なぜ現場に自分で評価させ、あえてバイアスをかけるのか
一見すると、テーマ評価は第三者が冷静にやるべきだと思われがちです。しかし資料では、営業と技術の双方に既存テーマを評価させ、あえて当事者のバイアスを乗せる意味があるとされています。
これは非常に重要な発想です。
理由は、現場の「生まれ変わらせたい」という動機そのものが、将来の競争優位性見込みを測る手がかりになるからです。もし現場が自分たちのテーマについて、「まだやれる」「別の形なら勝てる」と強く思っているなら、その背景には何らかの仮説や現場感覚があるはずです。もちろん、それがそのまま正しいとは限りません。しかし、将来の打ち手を考える入口にはなります。

逆に、現場自身が「続ける理由は薄い」と感じているテーマもあります。こうしたテーマは、無理に延命させても、モメンタムは高まりにくいでしょう。つまり、現場評価を使う意味は、客観性を捨てることではなく、将来の競争優位を作ろうとする意思の強さを把握することにあります。
「1年以内に生まれ変われ」という猶予期間は何のためにあるのか
モメンタムマトリクスの考え方では、「生まれ変わり」と判断されたテーマに対して、一定の猶予期間を与える設計が重要になります。資料では、その代表例として**「1年以内に生まれ変われ」**という考え方が示されています。
この猶予期間の意味は、単なる先送りではありません。現場に対して、「今のまま続けること」は認めない一方で、「将来の競争優位を作るための行動」に正式な時間を与えることです。用途探索、顧客課題調査、競合分析、提案の組み換えなど、本来なら短期案件に押し流される活動を、正式な業務として実施させるための時間なのです。
もし猶予期間がなければ、低収益テーマは「続けるしかない」か「切るしかない」のどちらかになりやすくなります。しかし現実には、その間に変身できるテーマもあります。猶予期間は、そうしたテーマを見極めるための経営上の実験期間だと考えるべきです。
モメンタムマトリクスをどう投資判断につなげるか
最終的に重要なのは、このフレームを単なる整理表で終わらせないことです。モメンタムマトリクスは、投資判断につなげて初めて意味を持ちます。つまり、「継続」は通常投資の対象、「生まれ変わり」は条件付き投資の対象、「棚入れ」は優先投資対象から外す、といった形で、資源配分に反映する必要があります。

ここで大切なのは、現在の収益性だけではなく、将来の競争優位性見込みを投資判断に入れることです。資料でも、「ROICなどの過去指標だけではなく、将来の競争優位性見込みを加える」と整理されています。
この考え方があれば、低収益テーマでも、生まれ変わりの見込みが高いものには時間と予算を投じる合理性が生まれます。
逆に、見込みがないのに続けているテーマは、棚入れや縮小の判断がしやすくなります。つまり、モメンタムマトリクスの本質は、テーマを切ることではなく、資源配分を将来の競争優位づくりに合わせて再設計することにあります。

FAQ よくある質問
Q)ゾンビテーマとは何ですか
明確な競争優位や高い収益見込みが薄いにもかかわらず、惰性で続いているテーマのことです。誰も止められず、資源だけが張り付いている状態を指します。
Q)なぜ既存テーマの棚卸しが必要なのですか
既存テーマに人と時間が貼り付いている限り、新しい成長テーマに十分な資源を移せないからです。テーマ創出と棚卸しはセットで考える必要があります。
Q)継続、生まれ変わり、棚入れはどう使い分けるのですか
現在の競争優位性と将来の競争優位性見込みを見て判断します。今も強く今後も強いなら継続、今は弱くても変身余地があるなら生まれ変わり、見込みが乏しいなら棚入れです。
Q)モメンタムマトリクスは何を判断するためのものですか
現在の競争優位性と将来の競争優位性見込みを同時に見て、既存テーマへの投資継続、転換、棚入れを判断するためのフレームです。
Q)猶予期間を設ける意味は何ですか
将来の競争優位を作る行動に正式な時間を与え、本当に生まれ変われるかを見極めるためです。単なる延命ではなく、変身可能性を試す経営上の実験期間と考えるべきです。
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