F軸とは何か?顧客の潜在課題から新テーマをつくる方法

F軸とは何か?顧客の潜在課題から新テーマをつくる方法

(要約)本当の差別化とは、競合と同じ比較軸で少し勝つことではありません。顧客の潜在課題を解決する新しい評価軸、すなわちF軸を作ることです。本稿では、F軸の意味、潜在ニーズの捉え方、顧客課題調査から新テーマを構想する手順を整理します。

製造業の新テーマ創出を考えるとき、多くの企業はまず「競合より少し性能を上げる」「価格で勝つ」「既存製品を改良する」といった発想から入ります。しかし、そのやり方だけでは、なかなか高収益なテーマにはつながりません。なぜなら、それは競合と同じ比較軸の中で戦っているからです。

本当の差別化とは、既存の比較軸の中で少し勝つことではありません。顧客がまだ十分に認識していない課題、あるいは解決策があると知らないために抱え続けている不便を見つけ、その解決を通じて新しい評価軸を作ることです。これを本稿では、資料の表現に沿ってF軸と呼びます。資料でも、差別化とはA〜E軸の改良ではなくF軸創出であり、潜在課題を解決するF軸の設定が必要だと示されています。

本稿では、F軸とは何か、なぜ同じ軸の競争では儲かりにくいのか、潜在ニーズをどう捉えるのか、そして顧客課題調査からF軸仮説をどう作るのかを整理します。

競合と自社が性能A〜Eで比較される中で、A〜Eの改良ではなく潜在課題を解決するF軸を新たに設定することが差別化であると示す図
差別化とはF軸創出であり、同軸競争ではない

F軸とは何か―差別化とは新しい評価軸をつくること

F軸とは、競合と同じ比較軸で少し上回ることではなく、顧客が価値を感じる新しい評価軸そのものを作ることです。たとえば、多くの企業は性能A、性能B、性能Cのような既存指標で競争しています。しかし、その中でわずかに優位を取っても、顧客からは「似たようなもの」と見なされやすく、価格主導権を取りにくくなります。

これに対してF軸は、「そもそも比較の仕方を変える」発想です。顧客が本当に困っているのは何か、どの行動に不便が埋まっているのかを捉え、その解決策を新しい価値として提案します。すると、自社は既存の比較表から少し外れた位置で評価されるようになり、価格競争に巻き込まれにくくなります。

資料でも「差別化とはF軸創出のこと、A〜E軸の改良ではない」「同軸競争は禁止」と整理されています。
つまりF軸は、単なるアイデアではなく、競争のルールをずらす戦略です。


なぜ同じ軸の競争では儲からないのか

同じ軸の競争では、顧客はどうしても「価格」「性能差」「納期」といった比較しやすい項目で判断しやすくなります。しかも、既存市場では競合も同じ土俵で改善を重ねているため、差がついても一時的になりがちです。結果として、営業現場では「少し安くする」「もう少し良くする」といった交渉に入りやすくなり、価格主導権を握りにくくなります。

資料でも、単品商売からセット提案に変えることで粗利8割を狙える事例が示されており、単なる部品販売ではなく、顧客全体の課題を解く形に変わったときに利益構造が改善することが示唆されています。
つまり、儲からない理由は、技術力不足だけではありません。顧客から「同じものの一種」と見なされる売り方をしていることにも原因があります。

同じ軸の競争を続ける限り、改善は必要でも、差別化にはなりにくいのです。だからこそ、性能の延長線ではない新しい価値軸、すなわちF軸が必要になります。


潜在ニーズとは何か―顧客がまだ言語化していない課題をどう捉えるか

F軸を作るうえで重要なのが、潜在ニーズです。潜在ニーズとは、顧客が「困っていない」と言っているものではありません。むしろ、顧客が解決策があると知らないために、仕方なくやっている行動の中に埋まっている課題です。

資料では、潜在ニーズを「顧客が、解決策があると知らないからする行動」と説明しています。たとえば、自分で野菜を切る、通勤する、人が運ぶ、といった行動は、それを代替する解決策があると知らない、あるいは一般化していないから続いているものです。カット野菜、Zoom、配膳ロボットがそれぞれの解決策にあたります。

この考え方はBtoBでも同じです。顧客が今当たり前にやっている工程、評価作業、準備作業、調整作業の中には、「本当は減らしたいが、仕方ないと思っている負担」が含まれています。その負担を見つけ、その解決を提案できれば、顧客は初めて「そんなやり方があったのか」と気づきます。これが潜在ニーズを起点にしたテーマ創出です。

自分で切る・調理する、通勤する、人が運ぶといった行動が、カット野菜、Zoom、配膳ロボットのような解決策を知らないために続いていることを示す図
潜在ニーズとは「解決策があると知らないから続けている行動」である

「ドリルを売るな、穴を売れ」をR&Dテーマ創出にどう活かすか

「ドリルを売るな、穴を売れ」という言葉はよく知られていますが、R&Dテーマ創出に当てはめると意味がより明確になります。重要なのは、自社が持つ商品や技術そのものを売ろうとするのではなく、それによって顧客のどんな課題を解けるかを考えることです。

資料でも、「商品ではなく、課題解決を売るのが正解」と明示されています。
製造業の現場では、自社の樹脂、材料、部品、装置の性能を説明することに慣れています。しかし顧客が欲しいのは、しばしば性能そのものではなく、工程短縮、品質安定、歩留まり改善、評価工数削減、立上げの容易さといった成果です。

したがって、R&Dテーマを考えるときも、「この技術をどう売るか」ではなく、「顧客の何を楽にするか」「どの不便を消せるか」から発想する必要があります。F軸は、この課題解決の発想から生まれます。

ドリルを売るな、穴を売れ
ドリルを売るな、穴を売れの図

顧客課題調査からF軸仮説をつくる手順

では、F軸はどうやって作るのでしょうか。ここで重要なのが、顧客課題調査です。発想論だけではなく、顧客や競合を調べ、顧客が何を作っていて、どこで困っていて、どのような工程や評価をしているのかを把握する必要があります。

資料では、生成AIも活用しながら、顧客課題調査を通じてF軸を考案できるとされ、そのための実務フレームとして営業3点セットが示されています。具体的には、商談前準備、ディスカッション・ペーパー、差異化提案シートです。これにより、もの売りからソリューション提案へ進化し、潜在ニーズを発見しやすくなると整理されています。

R&D側から見ると、F軸仮説づくりの手順は、おおむね次のようになります。

H3:手順1 顧客が何を作り、どんな工程を持っているかを把握する

顧客商品の全体像、製造工程、評価工程、負荷の高い業務を把握します。

H3:手順2 顧客が当たり前に続けている行動を観察する

手間がかかっているのに当然視されている行動に注目します。そこに潜在ニーズが隠れています。

H3:手順3 競合がどの軸で提案しているかを整理する

既存競争軸が何かを知ることで、同軸競争に入らないための視点が得られます。

H3:手順4 課題解決セットを仮説として組み立てる

自社の技術や周辺技術を組み合わせて、顧客の手間や負担を減らす解決策を考えます。

H3:手順5 提案仮説を顧客との対話で磨く

仮説のまま終わらせず、顧客との会話で検証し、必要ならセット提案や評価系技術まで広げます。

商談前準備、ディスカッション・ペーパー、差異化提案シートの3点セットで潜在ニーズを見つけ、もの売りから課題解決営業へ変える流れを示す図
営業3点セットで潜在ニーズを発見し、ソリューション提案へ進化する

八百屋とカレーの例で考えるF軸テーマの作り方

F軸の考え方は、八百屋とカレーの例で理解すると分かりやすくなります。八百屋がジャガイモ、タマネギ、ニンジンを売っているだけでは、どこも似たようなものです。つまり、同じ軸の競争に入っています。ここで「もっと美味しいジャガイモです」と訴えるだけでは、大きな差別化にはなりません。

しかし、顧客であるカレー店の課題を調べると話は変わります。たとえば、店主が早朝から仕込みをしている、野菜の下処理に時間がかかる、味のばらつきが出やすい、といった負担が見えてくるかもしれません。そこで、単なる野菜販売ではなく、「カレーづくりの負担を減らす半調理セット」「仕込み時間を短縮するセット提案」を考えると、評価軸が変わります。

資料でも、八百屋の例を用いて「課題解決セット考案」「ソリューション提案」への進化が示されています。つまり、F軸テーマとは、技術の性能を起点にするのではなく、顧客の現場の不便を起点に再設計されたテーマなのです。


FAQ よくある質問

Q)F軸とは何ですか

F軸とは、競合と同じ比較軸の中で勝つのではなく、顧客の潜在課題を解決する新しい評価軸を作ることです。差別化を生む軸そのものを設計する発想です。

Q)なぜ同じ軸の競争では儲かりにくいのですか

同じ軸の競争では、顧客が価格や小さな性能差で比較しやすくなるため、価格主導権を取りにくくなるからです。結果として、似たようなもの同士の競争に巻き込まれやすくなります。

Q)潜在ニーズとは何を指すのですか

潜在ニーズとは、顧客が解決策があると知らないために続けている行動の中に埋まっている課題のことです。本人が言語化していなくても、行動を観察すると見えてくる負担や不便が該当します。

Q)顧客課題調査はどのように行えばよいですか

顧客の商品、工程、評価方法、手間のかかる作業、競合の提案軸を調べることから始めます。そのうえで、自社技術でどの負担を解消できるかを仮説として組み立てます。

Q)F軸テーマを作るときに最初に考えるべきことは何ですか

最初に考えるべきなのは、自社技術の特徴ではなく、顧客が当たり前に続けている不便な行動は何か、という点です。そこに潜在ニーズが隠れていることが多いからです。

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