中長期テーマをどう評価するか―R&Dと営業のプロセス評価設計

中長期テーマをどう評価するか、R&Dと営業のプロセス評価設計

(要約)中長期テーマが評価されにくいのは、成果が出るまでに時間がかかるからです。だからこそ、成果だけでなく、その成果を生むためのプロセスを定義し、営業とR&Dの行動を評価対象にする必要があります。本稿では、事業ステージ別の考え方と、営業3点セット・R&D3点セットによる評価設計を整理します。

中長期テーマが必要だと言われながら、実際には短期案件ばかりが優先される。多くの製造業で見られるこの現象の背景には、評価の難しさがあります。中長期テーマは、成果が出るまでに時間がかかり、何をもって「進んでいる」と判断するのかが曖昧になりやすいためです。

その結果、現場ではどうしても、売上、納期、品質、予算達成といった、短期で測定しやすい指標が優先されます。制度上は中長期行動も評価できる建て付けになっていても、運用上は短期成果偏重になりやすいのです。

この問題を解く鍵は、結果だけでなく、その結果を生むためのプロセスを定義し、評価対象にすることです。本稿では、中長期テーマがなぜ成果だけでは評価しにくいのか、事業ステージごとに何を評価すべきか、そして営業3点セット・R&D3点セットをどう評価設計に組み込めばよいのかを整理します。

中長期的な成果のためにはプロセスが必要であり、短期成果だけを評価すると中長期活動が業務化されにくいことを示す図
中長期テーマは成果だけではなくプロセスで評価する必要がある

なぜ中長期テーマは成果だけでは評価しにくいのか

短期案件であれば、成果は比較的明確です。いつまでに何を出すのか、予算内でできたのか、納期を守れたのか、売上につながったのか、といった指標で評価できます。ところが中長期テーマは、そう簡単ではありません。成果が出るまでに時間がかかり、途中段階では売上や利益として見えないからです。

たとえば、新用途探索、顧客課題調査、潜在ニーズの仮説構築、競合分析、F軸の設計といった活動は、中長期テーマに不可欠です。しかし、これらは「今期いくら売れたか」といった単純な数字に直ちには置き換えられません。そのため、成果だけで評価しようとすると、どうしても後回しになります。

資料でも、「中長期の仕事は測定しにくいから評価されにくい」という問題意識が示されています。
要するに、中長期テーマが評価されないのは、重要でないからではありません。成果だけでは測れないからです。


プロセス評価とは何か―結果ではなく報告書と実施有無を測る

では、どうすれば評価できるのでしょうか。答えは、成果そのものではなく、成果を生むためのプロセスを定義して評価することです。ここでいうプロセス評価とは、「頑張っているか」を曖昧に見ることではありません。何を調査し、どの報告書を作成し、どこまで仮説を具体化したか、といった行動の実施有無と品質を評価することです。

例として、R&Dでのプロセス評価をどうするかをお示しします。

業務プロセスを評価可能にする考え方として、営業とR&Dそれぞれに「3点セット」が提示されています。実施すれば報告書や提案シートとして可視化されるため、定量的な評価対象にしやすいという利点があります。

つまり、プロセス評価とは、中長期テーマ創出のための仕事を、正式な業務として見える化する仕組みです。これがなければ、中長期テーマはいつまでも「やれたらやること」に留まります。


H2:事業ステージごとに必要な成果とプロセスはどう違うのか

すべての事業に同じ評価を当てるべきではありません。なぜなら、事業にはステージがあり、成長初期、成熟期、問題児化した段階では、必要な行動が異なるからです。

成長初期では、売上を伸ばすための顧客開拓や用途展開が重要になります。成熟期では、競争優位を維持するための差別化や潜在ニーズ発掘が重要になります。問題児化した事業では、新用途探索や事業モデル転換が必要になることがあります。したがって、中長期テーマの評価設計も、事業ステージごとに変えなければなりません。

事業ステージごとに営業とR&Dに求められる中長期行動が異なり、評価すべきプロセスも変わることを示す図
事業ステージによって求められる中長期行動は異なる

事業ステージに応じて営業とR&Dに求められる活動が異なることが整理されており、たとえば「金のなる木」では差別化のためのF軸創出、「問題児」では新用途探索が必要だと示されています。
したがって、評価制度は一律のルールで回すのではなく、どのステージの事業に、どの行動を求めるのかを先に定義する必要があります。


営業3点セットで何を評価できるのか

営業3点セットとは、
商談前準備
ディスカッション・ペーパー
差異化提案シート
の3つです。

商談前準備、ディスカッション・ペーパー、差異化提案シートによって、営業が顧客課題を調べ、中長期テーマの種を作る流れを示す図
営業3点セットは潜在ニーズ発掘の実務フレームである

これらの意味は明確です。商談前準備では、顧客の事業、商品、工程、課題を調べます。ディスカッション・ペーパーでは、その理解をもとに顧客との対話の論点を整理します。差異化提案シートでは、既存商品売りではなく、顧客課題を踏まえた提案仮説を示します。

重要なのは、この3点セットが潜在ニーズ発掘と課題解決提案のプロセスになっていることです。単に「たくさん訪問した」「たくさん電話した」といった活動量ではなく、顧客理解と提案設計の質を評価対象にできます。営業が目先の売上だけでなく、中長期テーマの種を作っているかを測るための道具になるのです。

したがって、営業評価を見直すときは、売上だけを見るのではなく、この3点セットをどれだけ回し、どの水準で実施したかを評価項目に入れる必要があります。


R&D3点セットで何を評価できるのか

R&D3点セットとは、
用途探索
顧客課題調査
競合調査
の3つです。

3点セットでプロセス評価を行い、成果主義の中で成果の出るか出ないか分からない
R&Dでも営業でも3点セットでプロセス評価する

この3点セットは、中長期テーマを生むための基本動作を表しています。用途探索は、自社技術をどこに展開できるかを考える活動です。顧客課題調査は、顧客がどこで困っているか、どのような負担を抱えているかを把握する活動です。競合調査は、同じ市場で競合がどの軸で戦っているかを理解する活動です。

この3つが揃って初めて、F軸の仮説や新テーマの仮説が具体化していきます。逆に言えば、これらをやっていない状態で「中長期テーマを出せ」と言っても、現場にとっては無理難題です。したがって、R&Dの中長期評価では、テーマ数や売上予測だけを見るのではなく、この3つのプロセスをどれだけ実施し、どの程度の質でまとめたかを見なければなりません。


業績評価と人物評価をどう組み合わせれば中長期テーマを動かせるのか

ここでよくある誤解は、「中長期テーマを評価するなら、業績評価を捨てなければならない」というものです。しかし、そうではありません。大事なのは、業績評価と人物評価、あるいはプロセス評価を、どの比率で、どの業務に対して適用するかです。

人事評価の建て付けでは業績評価と人物評価の配分を変えられるが、現実の運用では短期成果に偏りやすいことを示す図
制度上は中長期行動も評価可能だが、運用で短期偏重になりやすい

短期案件には短期案件の評価指標が必要です。納期、品質、売上、利益などは引き続き重要です。しかしそれだけでは、中長期テーマの種まきは永遠に本格業務になりません。だからこそ、中長期テーマ創出に必要なプロセスを人物評価や行動評価の中に明確に組み込む必要があります。

資料でも、評価制度の建て付け上は、業績評価と人物評価の割合は変えられると示されています。
つまり、制度がまったく不可能なのではなく、何を評価項目として定義し、どの比率で運用するかが問われているのです。中長期テーマを本当に動かしたいのであれば、営業にもR&Dにも、短期成果と中長期プロセスの両方を評価する設計が必要です。


FAQ よくある質問

Q)なぜ中長期テーマは成果だけでは評価しにくいのですか

成果が出るまでに時間がかかり、今期の売上や利益のような短期指標に直ちには表れにくいからです。そのため、成果だけで評価すると後回しになりやすくなります。

Q)プロセス評価とは何ですか

中長期テーマの成果を生むために必要な行動を定義し、その実施有無や報告書、提案シートの内容を評価対象にすることです。

Q)事業ステージ別に評価を変える必要はなぜあるのですか

事業ステージによって必要な行動が異なるからです。成長初期と成熟期、問題児化した事業では、営業やR&Dに求められる中長期行動が変わります。

Q)営業3点セットとは何ですか

商談前準備、ディスカッション・ペーパー、差異化提案シートの3つです。顧客課題を調べ、潜在ニーズを見つけ、差別化提案を構想するための実務フレームです。

Q)R&D3点セットとは何ですか

用途探索、顧客課題調査、競合調査の3つです。新テーマやF軸仮説を生むための基本プロセスを表しています。


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