
ROICと研究テーマは、前提条件が根本的に異なります
ROICは、投下資本に対してどれだけ効率よく利益を生み出したかを測る指標です。その前提には、一定の確実性や再現性、さらには事後的な検証可能性があります。一方で、研究テーマは本質的に不確実性を内包しています。成果が出るかどうか、いつ出るのか、どの用途に結びつくのかは、事前には分からないのが通常です。この時点で、ROICと研究テーマは前提条件が大きく異なっていることを理解する必要があります。

研究をROICで「評価しよう」とすると無理が生じます
研究テーマをROICで直接評価しようとすると、数値を置くための仮定が増え、評価の信頼性は急速に低下します。市場規模、価格、シェア、利益率などを仮置きすれば、一見もっともらしい数字は作れますが、それが研究段階の意思決定にどれほど意味を持つかは疑問です。研究において重要なのは、精緻な数字よりも、「この技術が何を変え得るのか」という構造的な理解です。
「お金の匂いがしない研究」と言われる理由
研究テーマが経営層から「お金の匂いがしない」と言われることがあります。その背景には、技術としては面白いものの、顧客課題や事業との接続が言語化されていないケースが多く見られます。研究者の頭の中では将来像が描けていても、それが共有されなければ、経営や事業部門からは単なる技術探求に見えてしまいます。このギャップこそが、研究と経営の距離を広げる要因です。
研究に「選択と集中」を持ち込みすぎてはいけません

ROIC経営の文脈では、「選択と集中」が強調されがちです。しかし、この考え方を研究テーマにそのまま当てはめることには注意が必要です。基礎研究や探索的研究では、成功確率が低いテーマにこそ大きなブレークスルーが潜んでいることがあります。研究費を特定テーマに過度に集中させると、探索の幅が狭まり、結果として将来の選択肢を減らしてしまう可能性があります。
研究成果には「時間」が不可欠です

研究成果を生み出すためには、一定の時間と集中が不可欠です。研究者が短期的な成果を求められ、細切れの業務に追われる環境では、質の高い研究は生まれにくくなります。ROIC経営を意識するあまり、研究者の稼働率や短期成果ばかりを管理してしまうと、かえって長期的な企業価値を損なう結果になりかねません。
それでも研究は「経済性」から自由ではありません

一方で、研究テーマが経済性の説明から完全に自由でよいわけでもありません。研究段階であっても、「どのような顧客価値につながり得るのか」「どの程度の市場規模が想定されるのか」といった点について、粗い仮説を持つことは重要です。ここで求められるのは正確な数字ではなく、研究テーマが経済的に成立し得るかどうかを説明できるストーリーです。
精緻な市場予測よりも「成立性の仮説」を持つ

研究テーマにおいては、精緻な市場予測や事業計画を作る必要はありません。むしろ、「この技術が実用化された場合、どのような顧客課題を解決し、どのような価値を生むのか」という成立性の仮説を持つことが重要です。この仮説があることで、研究者と事業部門、経営層との対話が可能になります。
理想的な研究テーマの三つの要件

ROIC経営下で評価されやすい研究テーマには、いくつかの共通点があります。第一に、顧客にとって意味のある差異化価値を生み出せる可能性があること。第二に、その価値を支える独自技術や特許が取得可能であること。第三に、将来的なサプライチェーンや事業展開まで視野に入っていることです。これらが揃っていれば、研究テーマは経営の議論に耐え得るものになります。
研究マネジメントの本質は「橋渡し」にあります
ROIC経営における研究マネジメントの本質は、研究の自由を奪うことではありません。研究の世界と経営の世界をつなぎ、将来の価値創出を言語化することにあります。研究テーマを数値で縛るのではなく、構造とストーリーで説明する。その役割を果たすことこそが、これからのR&Dマネージャーに求められる姿勢だと言えるでしょう。
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