技術ポートフォリオとは?R&Dにおけるリターン最大化のための資源配分のノウハウとは

要点

技術ポートフォリオとは、自社が保有する技術や研究開発領域を一覧化し、技術の成熟度、競争力、市場性、事業への貢献度などの観点から整理・評価し、研究開発投資や技術戦略の判断材料にする考え方です。この記事では、R&Dマネージャーに向けてその言葉の含意を説明します。

金融業界で「ポートフォリオ」には「結果を生み出すための効率的組み合わせ」という意味があることから、R&Dの世界では「R&Dポートフォリオを作ればどんな技術を開発すれば最良の結果を生み出せるのかが分かる」という期待感があるように思われます。

しかし当社は、「技術ポートフォリオを作れば、強化すべき技術や撤退すべき技術が決まる」という考え方には懐疑的です。なぜなら、技術の成熟度も技術の優位性も、それ自体を独立して簡単に評価できるものではないからです。さらに重要なのは、企業が必要としているのは「現在どの技術が強いか/弱いか」という評価だけではないことです。将来の競争環境を変えられる研究開発テーマを生み出すことこそ、技術戦略の重要な役割です。

当社では、技術ポートフォリオを「答えを出す道具」ではなく、現在地を整理するための地図と位置づけています。技術ポートフォリオは地図にはなる。しかし、地図を作っただけでは行き先は決まらない。技術戦略の本質は、将来どこで競争優位をつくるのかを決め、そのための研究開発テーマを生み出すことである。

技術ポートフォリオとは

技術ポートフォリオとは、自社が保有する技術や研究開発領域を一覧化し、技術の成熟度、競争力、市場性、事業への貢献度などの観点から整理・評価し、研究開発投資や技術戦略の判断材料にする考え方です。限られた研究開発資源をどこへ配分するのかを考えるうえで、技術を可視化することには意味がるように見えますが、しかし、実際は作っただけで終わることになりがちです。技術の棚卸しもやっただけで終わることになります。

巷によくある「技術ポートフォリオ」とは

一般的な技術ポートフォリオでは、企業が保有する複数の技術を共通の評価軸で整理し、研究開発投資の優先順位を検討します。成熟度、技術水準、競争力、市場性、事業貢献度、リスクなどを評価し、二軸または複数軸のマトリクスとして表現する方法がよく使われます。

研究開発テーマを可視化し、経営判断の材料にするという考え方自体には価値があります。技術ロードマップや研究開発テーマ評価と組み合わせることで、自社の研究開発活動を俯瞰することもできます。

問題は、ポートフォリオ上の位置から将来の投資判断までを直接導こうとするときです。「右上だから投資する」「左下だから撤退する」という使い方を始めると、技術評価そのものが持つ曖昧さが問題になります。

問題① 「技術の成熟度」は何を意味するのか

上に示すような技術ポートフォリオでは、「技術成熟度」を評価軸にすることがあります。一見すると分かりやすい概念ですが、実務では「成熟しているとはどのような状態なのか」を定義するところから難しくなります。

例えば、NASAのTechnology Readiness Level(TRL)は、技術成熟度を1~9段階で評価する有名な仕組みです。しかしTRLは、本来、特定の技術が想定するシステムや利用環境へ組み込める状態まで成熟しているかを見るためのものです。

つまり、「技術Aは成熟している」「技術Bは未成熟である」という絶対的な評価が存在するわけではありません。どの用途に使うのか、どの性能を求めるのか、どの製造条件なのか、どの顧客要求を満たす必要があるのかによって、成熟の意味は変わります。

しかも企業の技術は連続的に進化します。ある用途では成熟技術であっても、新しい市場や用途へ展開すれば、再び多くの研究開発が必要になることがあります。したがって、「成熟度が高い/低い」という評価から、その技術への投資額を直接決めることには慎重であるべきです。成熟度は開発リスクを見る指標にはなりますが、「将来どの技術を強化すべきか」という技術戦略そのものとは別の問題です。

問題② 技術的な優位性だけを切り出して評価できるのか

もう一つ、技術ポートフォリオでよく使われるのが「技術優位性」です。競合と比較して性能が高い、特許が強い、模倣が難しい、独自のノウハウがあるといった観点で評価します。しかし、企業にとって重要なのは技術競争そのものに勝つことではありません。事業として競争に勝つことです。

例えば、競合より20%性能が高い技術を持っていても、顧客がその性能を必要としていなければ事業上の競争優位にはなりません。逆に、純粋な技術性能では競合に勝っていなくても、顧客の工程を大幅に短縮できる、トータルコストを下げられる、評価工程を省ける、別の材料やサービスとセットで提供できるのであれば、事業では勝てる可能性があります。

技術優位性を本当に評価しようとすると、結局は「顧客は何を必要としているのか」「競合は何をしているのか」「市場はどう変わるのか」「自社はどのように差別化するのか」を考えなければなりません。そこまで進むと、もはや単なる技術評価ではありません。事業戦略・競争戦略そのものです。

技術ポートフォリオの問題:過去の分析は未来の予想にならない

技術ポートフォリオには、さらに根本的な問題があります。現在持っている技術を並べて、「これは強い」「これは弱い」「これは成熟している」と評価するだけでは、未来の競争環境は変わらないということです。例えば現在、競合に劣後している事業があるとします。そこで「自社技術を評価したところ競合より弱かったので、投資を減らす」という判断だけを続けていれば、その事業が競争相手を逆転する可能性はさらに小さくなります。

こういう意思決定を続ければ、開発資源は無駄になりかねません。当社の批判する同軸競争につながり、競争優位性(F軸)のある事業にはなりません。むしろ考えるべきなのは、「何を開発すれば、現在の競争環境そのものを変えられるのか」です。F軸についてはこちら。

必要なのは、現在強い技術を選ぶことだけではありません。将来の競争優位性をつくる研究開発テーマを創出することです。そして、テーマ創出のことをを「技術ポートフォリオ」とは呼ばないでしょう。ここに、R&Dマネージャーの「技術ポートフォリオ」という言葉への期待感を収束させることが必要かと思います。

これを「技術ポートフォリオ」と呼びますか?

保有技術の比較による、有意義な意思決定のありかた

とはいえ、保有技術の確認をポートフォリオ的な視点で実施することはあるでしょう。そして、自社と他社を比較することには意味があります。例えば、ある事業を対象にして、自社と他社を比較するとします。例えば以下のようになります。

競合分析の図

図に示すように、周辺A1、用途A2というのはB社に先行されており、技術開発が未整備だとすれば、投資の余地があることが分かるでしょう。開発方針例①のようにその分野に投資するかも知れません。しかし、周辺A1、用途A2を開発しても、同軸競争になるだけで差異化にはなりません。とはいえ、事業をしていればA1,A2で負けていることは、技術を比較しなくても明らかです(営業の人が気づいています)。こんな分析をしなくてもこの程度の意思決定はできます。

開発方針②のように、B社の先を行く開発をし、いわゆる攻めの特許を取った場合には、B社への牽制になります。知財の話になるものの、クロスライセンスが有利な条件で結べるかも知れません。その場合、B社の先を行く機能を製品に搭載することも、可能です。有意義な開発になります。攻めと守りの特許についてはこちらを参考に

開発方針③のように、別の用途を開発したり、顧客課題を別のアプローチで解決したり、代替技術を開発したりすることには、①②以上に有意義です。差異化につながる活動なので、ここにこそリソースを割くべきと言えます。これは競合の技術開発動向をみなければできない意思決定かも知れません。

むしろ「競合分析」と呼ぶのがベターか?

上記のように、技術の可視化が意思決定につながりうることはお示ししたのですが、注意していただきたいことがあります。それは、この可視化は事業単位(もしくは商品単位)で行われ、それだけに競争相手が明確であり、用途や製法などの技術の機能の明確なことです。このような比較はすでに事業部のレベルの競争優位性の判断として行われるべきです。「技術ポートフォリオ」ということばではなく、開発戦略策定の一環として行われる「競合分析」と言ったほうがしっくりくるのでは?と思います。

このように、「技術ポートフォリオ」という言葉がしっくり来るのは、事業部や商品の単位ではありません。むしろ、複数事業を束ねる会社での全社単位です。なぜならば、複数事業で複数の種類の技術を持っており、ポートフォリオ(ここでは組み合わせ)に意味があると連想するからです。

事業部開発においては、技術ポートフォリオの作成業務は無意味か?

上記では競合分析と言う呼び方の方がしっくりくると言う説明をしています。事業部の開発において、すなわち事業または商品がはっきりと規定されており、それゆえに競合が明確であり、関連する特許が明確に棚卸しできる場合には、比較する目的や制度も十分にあり、十分に有意義なアウトプットを出すことができます。

しかしながら、それを技術ポートフォリオと呼ぶことには違和感があり、むしろ競合分析と呼んだほうが良く、言い換えると事業部門・開発部門において技術ポートフォリオの作成業務と言うのは意味がないと言えるでしょう。むしろしっかりとした競合分析を行った方が良く、それは技術ポートフォリオの手法によらず行うことができます。

全社技術ポートフォリオを作る前に、権限を確認する

特に大企業で技術ポートフォリオを検討するときには、もう一つ確認しておくべきことがあります。「そのポートフォリオを使って、誰が資源配分を変えるのか」という問題です。

例えばコーポレートの技術戦略部門が、研究所だけでなく各事業部が持つ技術まで棚卸しし、成熟度や技術優位性を評価して、「この技術へ投資すべきだ」「この領域を縮小すべきだ」と提案するとします。理屈としては可能です。しかし、その技術戦略部門には本当に事業部の研究開発予算や人員配置を変える権限があるでしょうか。

権限がなければ絵に描いた餅

各事業部は顧客と向き合い、自らの予算で商品開発・技術開発を行っています。その事業の競争環境や顧客事情を、コーポレート技術戦略部門より深く理解している場合も少なくありません。そこへ横から「この技術はポートフォリオ上の評価が低いので削減しましょう」と提案しても、実際の資源配分が変わらなければ、ポートフォリオは単なる資料になります。

もちろん、技術戦略部門が全社R&D資源について明確な決定権を持っているのであれば、それも一つのガバナンスです。しかし、そうではない企業では、技術ポートフォリオの作成以前に、誰が何を決定するのかを明確にする必要があります。

技術戦略部門等のコーポレートでは事業部に対する権限はありませんから、事業部に対して提案程度しかできません。提案程度では受け取ってもらえない可能性も高く、とは言え、喜ばれる可能性もありますの。どのような反応が期待できるか?喜ばれることをイメージできるのであれば、以下のようなことを行うことができるでしょう。

全社技術ポートフォリオにより、組み合わせの妙味で独自の顧客価値を発揮することにある

独自の組み合わせが独自の顧客価値を生む

下の図は、鉄道の車両の進化をイメージしたものです。蒸気機関車が電車となり、自動運転されるようになり、自律運行されるようになった経緯を描いていますが、上のほうにT字が見えると思います。機械技術だけでなく、電気やソフトAIの技術があって、初めてこのような進化が実現されました。

この図が示すのは、異なる技術との新しい組み合わせが新しい価値を見出したということです。このような技術的に新しい組み合わせを作ることによって、新しい価値を見出そうとする努力をするべきです。オープンイノベーションがその手段になる事は間違いありませんが、複数の事業部門を有する大企業であれば、まずは社内技術の組み合わせが優先されても差し支えないでしょう。詳しくは「初めての方へ」もご覧ください。

イノベーションの源泉はT字人材の組み合わせ

全社的な棚卸しにより、独自の組み合わせを豊富に生み出せる

独自の顧客価値(F軸)多く生み出すためには、独自の技術が必要となりますが、多くの場合技術は成熟しており、それ自体で独自性は無いことがほとんどです。そのため、何らかの方法で独自の技術を生み出す方法がありますが、複数事業を有する大企業であれば、事業部内の技術を組み合わせることで独自技術を生み出すことが可能となります。

全社的な技術を棚卸しし、ポートフォリオ(組み合わせ)を作ることのメリットは以下の図が示す通り、独自性のあるテーマを創出することです。

保有技術の組み合わせにより新たな価値軸を創出し、顧客課題を新たに解決していく。

コーポレート技術戦略部門の役割は?

では、コーポレート技術戦略部門は何をするべきなのでしょうか。私は、事業部の技術戦略を代わりに作るのではなく、「事業部自身が優れた技術戦略を作れる状態をつくる」ことが重要だと考えています。

「ゾンビテーマ」を並べ替えても成長テーマにはならない

まず、事業部の事業ごとのROICがどうなのかということについて、コーポレートも評価材料の1つにすることが可能でしょう。その上LROICスプレッドが充分取れているのかいないのかをまずは判断して、事業部長がどのように事業を進めなければならないかの判断をします。ROICスプレッドが充分でないのに、従来と変わらないようなテーマに開発資源を投入しているようであれば問題があります。ROICのR&Dへの展開についてはこちら。

既存顧客から繰り返し依頼される改良テーマは、売上との関係が分かりやすいため、研究開発テーマ評価では高く評価されやすくなります。一方、将来の新市場や潜在ニーズを狙うテーマは不確実性が高く、数字を示しにくいため評価が低くなりがちです。

儲からないテーマをゾンビテーマと言います。
ゾンビテーマが生まれる理由は人の認識にある。

その結果、技術ポートフォリオを作ったにもかかわらず、「既存テーマをきれいに分類しただけ」になることがあります。当社では、競争優位性を失っているにもかかわらず、顧客要望や過去の投資などによって継続される研究開発テーマを「ゾンビテーマ」と呼んでいます。テーマの評価についてはこちら

ゾンビテーマばかりの組織に必要なのは、より精緻なポートフォリオ図ではありません。既存テーマを生まれ変わらせる能力と、新しい成長テーマを創出する能力です。関連する考え方については、「ゾンビテーマからの脱却」「研究開発テーマの創出」でも詳しく解説しています。

テーマ創出力の強化を

研究テーマの創出に必要なのは、市場を調べ、顧客の潜在課題を調べ、競合を調べ、自社技術を理解し、不足する技術を特定し、将来の競争優位性を設計することです。そして、「このテーマなら将来の競争優位性をつくれる」という研究開発テーマを増やす。それをポートフォリオと予防と呼ぶ前と意味がないことです。

例えば研究開発テーマの多くが、顧客から依頼された改良、既存商品のスペックアップ、営業から持ち込まれた個別案件だったとします。そのテーマ群をどれほど美しいマトリクスに並べても、元のテーマが変わるわけではありません。

上でも触れた通り、企業に「競争優位性のある研究開発テーマを生み出す能力」がない状態で、技術ポートフォリオだけを高度化しても、大きな成果にはつながりません。

事業部に対しては、技術ポートフォリオより先に、テーマ創出力を問う

全社技術ポートフォリオを中央で作ること以上に、各事業部が競争優位性のある技術戦略を作れる状態を構築することが重要です。そして各事業部が、「自分たちの事業を将来どう勝たせるのか」を自ら考えられるよう支援します。コーポレートはその戦略の質をレビューし、必要な問いを投げかけ、事業部をまたぐ技術や長期研究について資源配分を行います(そういう助言ができる関係が理想的)。

例えば、競争優位性をどう評価するのか、顧客の将来課題をどう調べるのか、競合の研究開発をどう分析するのか、将来必要となる技術をどう特定するのか、研究開発テーマをどう創出するのか、といった方法論を整備します。

そのために、コーポレート技術戦略部が上に書いたような全社技術の組み合わせを用いて新しい顧客価値を提案できる可能性を提案する活動には意味があります。

では、技術ポートフォリオは不要なのか

「ポートフォリオ」と言う言葉にとらわれず、目的を明確にして活動すること

技術ポートフォリオそのものが不要なわけではありません。使い方を限定すれば、非常に有用なツールです。私は技術ポートフォリオを、「意思決定そのもの」ではなく「議論を始めるための可視化ツール」として使うことを勧めています。

例えば、どの事業に技術が偏っているのか、類似技術が複数部門に重複していないか、技術者が退職すれば失われる技術はないか、重要技術なのに投資が減っていないか、将来必要なのに社内に存在しない技術は何か、といったことを確認する用途です。ここまでは技術ポートフォリオが得意な領域です。一方で繰り返すようですが、「右上なので投資」「左下なので撤退」というところまで、マトリクスに意思決定させないことです。

ポートフォリオという言葉に囚われずに、何が目的なのか、どのような手段で行うのかと言うことをきちんと考えた方が良いでしょう。ポートフォリオと言う言葉のイメージが先行し、何ができるのかと言うことを抽象的に考えてしまいがちですが、抽象的に考えた結果、思った通りにならないと言う事はよくあると思います。

自分の立場(コーポレートなのか事業部なのか)、どのような目的で行うのか(戦略の提案なのか立案なのか、新しい技術の発見なのか、既存技術の存在確認なのかなど)、どのような手段で行うのかを具体的に考えることです。そうすることで、技術ポートフォリオという言葉から離れたより、具体的な目的や成果活動内容のイメージができるはずです。

技術の棚卸しの成果を技術ポートフォリオとしても良い

技術の棚卸しについても、同じ考え方が重要です。技術の棚卸しの目的は、ポートフォリオ表を完成させることではありません。技術者自身が自社技術を理解し、「この技術は別の用途で何を解決できるか」「別の技術と組み合わせれば何が可能になるか」を考えられる状態をつくることです。コア技術理論の死についてはこちら

したがって、目指すべき流れは、「棚卸し → 評価 → 選別」だけではありません。「棚卸し → 理解 → 類推 → テーマ創出」へつなげる必要があります。

技術の棚卸し方法そのものについては、「技術の棚卸し」のページで詳しく解説しています。一方、このページでは、棚卸しした技術をどのように技術戦略や研究開発テーマにつなげるかを中心に考えます。

技術戦略部・事業部・研究所は何を担うべきか

技術戦略を機能させるためには、すべての技術を中央組織が評価するのではなく、組織ごとの役割を明確にすることも重要です。

組織主に担う役割
コーポレート技術戦略全社共通の戦略策定方法、評価思想、事業横断技術、長期投資、事業部への支援・レビュー
事業部顧客・競合・市場に基づく事業競争力の設計、必要技術の特定、研究開発テーマ創出
コーポレート研究所既存事業では拾いにくい将来課題、次世代技術、事業横断技術の探索
経営・CTO事業間・時間軸間の資源配分、事業部単独では実行困難な投資の決定

「技術戦略部が全社技術をすべて評価し、優先順位を付ける」という構造よりも、事業部が自ら競争戦略と技術戦略を考え、コーポレートがその方法論と全社最適を支える構造の方が、多くの大企業では現実的です。

技術ポートフォリオを作る前に確認したい7つの質問

技術ポートフォリオを作成する前に、次の7点を確認してみてください。

  1. このポートフォリオを使って、誰が何を決定するのか。
  2. その人・組織には実際に資源配分を変える権限があるか。
  3. 技術成熟度の定義は、用途や事業ごとに明確になっているか。
  4. 技術優位性を、顧客価値や事業上の競争優位性と混同していないか。
  5. 現在保有していない「将来必要となる技術」も議論できているか。
  6. 技術を評価するだけでなく、新しい研究開発テーマを創出できているか。
  7. ポートフォリオ作成後に、投資・中止・新規テーマ創出という行動が実際に起きるか。

この7問に十分答えられない状態であれば、マトリクスをさらに精緻化するよりも、先に技術戦略のプロセスそのものを見直した方がよいでしょう。

技術ポートフォリオは「未来を選ぶ道具」ではなく「現在地を知る地図」

技術ポートフォリオは、自社がどのような技術を持っているのかを俯瞰し、技術の偏りや重複、将来必要となる技術とのギャップを議論するためには有効です。しかし、現在持っている技術を評価するだけでは、将来の競争優位性は生まれません。

技術戦略で本当に重要なのは、「今どの技術が強いのか」という問いだけではなく、「将来どこで勝ちたいのか」「そのために何を開発するのか」という問いです。

技術ポートフォリオを作ることを目的にするのではなく、将来の競争優位性を設計し、そのための研究開発テーマを生み出す。その過程で現在の技術を理解する道具として技術ポートフォリオを使う。

この順序で考えることが、R&D資源配分を技術戦略につなげるうえで重要です。

特に最後に「技術ポートフォリオは現在地を知る地図」という結論を置いたことで、冒頭の主張と最後がつながる構成にしています。また、元稿では同じ「テーマ創出が重要」という主張が何度か現れていたため、それぞれ「全社ガバナンス」「事業部」「ゾンビテーマ」「棚卸し」と役割を分けました。

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