研究開発マネジメント

研究企画部門、研究管理部門の方向けに研究開発マネジメントの果たすべき役割や、実務について記載した解説記事です。個別の研究開発マネジメント施策の内容については、各記事に詳細が説明してあります。

研究開発マネジメントの目的と役割

研究開発マネジメントで実現するべきなのは、経営要求に見合った(あるいは、上回る)戦略の策定です。皆さんの会社では、経営からの要求(右)は明確でしょうか?また、下の図にあるようなテーマ総額(左)や、不足部分(青)が明確でしょうか?

経営者の要求を実現できるのが、本来あるべき研究開発部門の姿です。図に示す通り、青い部分を日常のテーマ創造や技術戦略により、様々な経営者の要求を実現できるようにすることが肝要なポイントです。

ただし、日常的なテーマ創造は研究企画部門だけではなく、各技術部門でも行われます。そのため、研究開発マネジメントの要である研究企画部門では、各技術部門でのテーマ創造を日常化する必要があります。これが研究企画部門の役割の一つです。

上記の図のように、研究開発マネジメントに関する業務が日常的に行われなければなりません。

また、技術戦略の策定は、定期的に行う必要があります。毎年行ったり、3年に一度行う必要があります。

その他、研究開発マネジメントの業務として、技術マーケティングやIPランドスケープなどの活動も連携させてテーマ創造を活発化させ、次世代のコア技術・技術力を生かした新商品を生み出し会社の利益要求を実現することが肝要です。

研究開発マネジメント① 研究開発テーマの創出

研究開発マネジメントの要の一つが研究開発テーマの創出です。研究開発テーマとは、顧客要望対応(いわゆる「下請け」の内容)ではなく、また、下図の右上に示す金食い虫のテーマでもありません。研究開発テーマとは、技術軸または顧客軸のどちらかが新規のテーマなのです。

研究開発マネジメントに取り組む研究企画部門は、技術軸または市場軸のどちらかが新規のテーマを作るための工夫をし、新規テーマを作る仕掛け・仕組みを導入するのが業務となります。

例えば、上記のように、技術マーケティングやテーマ創出を連動させることにより、研究開発マネジメントの高度化を図ることが必要となります。

研究開発テーマについてさらに詳しくはこちらをご覧ください。

研究開発マネジメント② 技術戦略の策定

技術戦略とは、研究開発部門発の会社の成長戦略のことです。

研究所には技術主導で会社を成長させる戦略が求められています。会社は、事業ポートフォリオを常に入れ替える必要があります。研究開発部門は、技術戦略とそれに伴う高収益な新商品・新事業を生み出せる仕組みにより会社の成長戦略に貢献するのです。

技術戦略には以下のものを含みます。

  • 将来の成長産業・社会的要請・トレンド
  • 成長産業・トレンドに必要な技術
  • 当社技術との整合・不足技術
  • 顧客の潜在課題・技術プラットフォーム
  • 不足技術の獲得戦略
  • 基盤技術ごとのロードマップ

研究開発マネジメントに取り組む方は、自社の成長を実現する技術戦略を策定する必要があります。

ここで言う技術戦略は、下で言う「高レベル 会社レベルの資源配分戦略」や「中レベル 事業レベルの事業・技術戦略」を指しています。

高レベル 会社レベルの資源配分戦略
中レベル 事業レベルの事業・技術戦略
低レベル 商品・技術戦略

技術戦略について、更に詳しくはこちらをご覧ください。

また、当社コラムのこちらもご覧ください。
技術戦略に関するコラムの目次を記載してあります。

研究開発マネジメント③ 技術マーケティングの企画と実行

技術者がテーマを発表していて、「つまらない」「競合もやっている後追いテーマ」だと思うことはないでしょうか?面と向かって口に出すことははばかられるものの、そういうことがあると思います。

そのような状態の時、独自性の高いテーマの創出が出来ていません。テーマ創出に課題があることもありますが、潜在課題の発掘ができていないことも少なくありません。

潜在課題とは、コロナ前の「痛勤(通勤)」や「対面会議」などのように、顧客がかけている多大な手間やコストのことです。

技術マーケティングとは、自社の基盤技術を活かした顧客課題解決型の事業創造のことを指します。

上の図に示す通り、①顧客から学び、研究開発にフィードバックすることと、②技術をソリューションで見せることで潜在課題を効果的に発掘することの両方が必要です。

顧客からの学習によって基盤技術が充実し、基盤技術によって顧客に提供するソリューションが増えます。このサイクルを回す事が大事です。

技術マーケティングについて、更に詳しくはこちらをご覧ください。

また、潜在課題に関する当社コラムについては、こちらもご覧ください。

研究開発マネジメント④ 研究開発テーマの評価及び管理

研究開発テーマの評価は、研究開発テーマの創出と等しく重要です。なぜならば、研究開発テーマは評価によって徐々に姿を変えていくからです。生まれた状態の研究開発テーマは不完全でそのまま事業にはなりません。評価を経て修正され、市場に受け入れられるものになるのです。

研究開発テーマの積み上げによって技術戦略が策定され、会社の成長目標が実現出来ます。ただし、テーマをそのまま積み上げるのではなく、評価した上で積み上げる必要があります。

事業開発などの確実性が高いものは、NPV法、DCF法などの金融的評価尺度が在合います。しかし、これらの方法は研究開発テーマなどの不確実性の高いものには合いません。なぜなら、不確実性が高いからです。これらの方法は事業化前のある程度キャッシュフローが読めるような状態の時には使えるようになります。

研究開発マネジメントにおいては、テーマ初期段階(不確実性が高いもの)の投資対効果を金額的評価をすることが必要です。

また、研究開発テーマの評価を通じた強化を行わなければならないというのが当社の考えです。強化とは、競争優位にすることです。例えば、差異化のための機能の付加、競合と同等価格でも十分な利益がでる目標原価設定などの方法があります。

研究開発マネジメントにおいて、金額的な評価と共に、強化をするための研究開発テーマの評価をすることが必要です。

研究開発マネジメント⑤ IPランドスケープ

研究開発マネジメントの一環として、IPランドスケープ※を行うこともあります。IPランドスケープとは、知財情報等を活用した戦略策定のことを指します。

※IPランドスケープは、正林正之氏登録商標です。本記事では、当社のコンサルティング・サービスの案内としての使用ではなく、社内で行う活動として「IPランドスケープ」という用語を使用しています。

研究開発マネジメントにおいて、テーマ創出や技術戦略が重要であることは上記の通りですが、それらを支えるのがIPランドスケープです。

研究開発マネジメントを担う部門では、図に示すようなIPランドスケープのサービスを設けて実施する必要があります。

IPランドスケープについて、更に詳しくはこちらをご覧ください。

当社のコラム、こちらもご覧ください。
IPランドスケープでなにか見えると思っていないか?

研究開発ガイドラインのご案内

研究開発部門の高度化や人材開発を担う担当者のために、研究開発マネジメントの全体像が短時間で把握できる研究開発ガイドラインをお送りしています。

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